ピロルリアと精神症状
精神症状を発症している人の中には、クリプトピロール(kryptopyrroles)という生体内化学物質の異常な生成が生じている人がいます。
クリプロピロールもしくはピロール(パイロール)は、ヘモグロビン合成の際の副産物です。ヘモグロビンの合成・代謝における先天異常の結果HLP(Hydroxyhemopyrrolin)そしてクリプトピロール(KPU、2,4dimethyl-3-ethylpyrrole)が同様に上昇します。ほとんどの人は、体内に循環しているクリプトピロールがあったとしても少量です。
クリプトピロールは、独特の異臭をもつ黄色い(藤色)液体で、体臭や口臭の原因になります。
尿中にクリプトピロールが高濃度に検出される状態を「ピロール尿症」といい、この患者さんを「ピロルリア」と呼びます。
<ピロルリアの症状>
・疲労 ・口臭
・神経消耗 ・体臭(わきがなど)
・不眠 ・多動
・記憶障害 ・錯乱
・うつ ・気分動揺
・思考力低下 ・歯のエナメル質が弱い(虫歯になりやすい)
・上顎歯列が叢生 ・拒食症、摂食障害 など
*必ずしも上記の全ての症状を持つわけではありません。
統合失調症の人の30%
精神科の障害を持つ人の40%
健常者の11%
精神科の障害を持つ子供の25%
アルコール中毒者の40%
がピロルリアであるとも言われています。
ピロルリアは遺伝的な要素も関係します。
<ピロールレベルの上昇と関連>
・神経過敏 ・ストレスコントロールの悪化 ・気分のムラ ・短気記憶の問題 ・うつ病 ・認知能力の低下
<高いピロールと関連>
・自閉症 ・学習障害 ・アルコール依存症 ・ADHD ・うつ病 ・双極性障害 ・ダウン症 ・統合失調症 ・慢性ライム病
発見された歴史を以下に示します。
フォッファー、オズモンドが尿中に藤色因子陽性の患者を「マルバリア」と呼びました。
カナダのドナルド・アービンが藤色因子の正確な構造が、クリプトピロールという化学物質である事を発見しました。
カール・ファイファーらがクリプトピロールが重篤なビタミンB6欠乏を生じさせると提言しました。さらにピリドキサールとクリプトピロールの複合体が亜鉛を大量に尿中排泄させてしまうと見いだしました。
クリプトピロールは体の至る所で、アルデヒドと結合します。
アルデヒド・・・精神症状・・・といえば・・・
ビタミンB6です。
ビタミンB6は構造上以下のように分かれます。
・ピリドキシン
・ピリドキサール
・ピリドキサミン
上記の中で、ピリドキサールがアルデヒド型です。
脳内神経伝達物質セロトニンやドーパミンの合成の過程で、脳内で利用されるビタミンB6はP5P(ピリドキサール5リン酸)です。
ピリドキサール5リン酸はアルデヒド型です。
つまり、クリプトピロールの異常な生成が生じている人は、脳内で利用できるビタミンB6はクリプトピロールと結合し、尿中排泄されやすくなってしまうということです。
また、クリプトピロールとピリドキサールの複合体は、強制的に亜鉛を尿中排泄させてしまいます。
亜鉛欠乏が生じる事によって、摂食障害・拒食症が発症するかもしれません。また、有害重金属の解毒に重要なタンパク質:メタロチオネインの活性が低下するため、有害重金属体内蓄積が生じやすくなります。
有害重金属:水銀は脳神経細胞を萎縮させてしまいます。そして精神症状の引き金にもなり得るのです。
さらに亜鉛欠乏により、糖代謝に異常が生じます。低血糖症の出現も合併し、精神症状がより辛いものになってしまいます。
「ピロール尿症」「ピロルリア」は、ビタミンB6と亜鉛の重篤な欠乏が生じてしまいます。
亜鉛、ビタミンB6(P5P)はともに、脳内神経伝達物質セロトニン合成に必須のビタミン・ミネラルです。
精神症状が改善すると、尿中クリプトピロールの量も減少します。
また、悪化すると増加します。
ピロルリアには、遺伝的要素はありますが改善は可能です。
今までは定性検査しか実施できなかったためより数値化された検査は出来ませんでした。
しかし、今回新たにアメリカ(米国)のラボで日本からの検体で尿中クリプトピロール定量検査が可能になりました。ご希望の方は、ARPサイト内バイオメディカル検査よりお申し込みください。