カフェインの問題を知る
カフェイン(cafeine)はプリン環をもつプリンアルカロイドの一種でキサンチン誘導体に分類されます。
コーヒー類に含まれることからこの名で呼ばれています。
カフェイン、パラキサンチン、テオフィリン、テオブロミンはそれぞれキサンチンがメチル化された誘導体です。多少の違いはありますが、これらはほぼ同じような作用を持っています。
カフェイン・・・コーラ、コーヒー、緑茶、ウーロン茶、ココア、チョコレート、栄養ドリンク、薬剤など
パラキサンチン・・・動物によるカフェインの代謝物のみ
テオフィリン・・・カカオの苦み成分(チョコレート)、お茶、薬剤
テオブロミン・・・カカオ(チョコレート)、コーラ、ガラナ、マテ茶など
*生体内においては、肝臓においてカフェインが代謝されると、80%がパラキサンチン、10%がテオブロミン、4%がテオフィリンになります。最終的には主に尿酸になり尿中排泄されます。
*犬はテオブロミンの代謝速度が遅いので死にかかわってきます。チョコレート中毒と言われる状態になります。消化不良・脱水・過度の興奮・てんかん様発作を起こし、死に至ることもあります。
*お茶に含まれるカフェインは、タンニン(ポリフェノールの一種)と結びつくためカフェイン効果は抑制され、コーヒーのような興奮作用は緩やかです。しかし、タンニンはビタミンやミネラル、特に亜鉛や鉄の吸収を妨げます。しかも、お茶にはカフェインの類似物質であるテオフィリンが多く含まれています。これはカフェインよりも強力に気管支平滑筋拡張作用があります。気管支喘息や慢性気管支炎の薬としても使われていますが、副作用として痙攣を起こすことが問題になっています。お茶の飲みすぎは痙攣の原因になるかもしれません。
カフェインはアデノシン受容体に拮抗することによって、覚醒作用を示します。
カフェインは生体内に存在するアデノシンと類似の構造をもった分子です。
アデノシンは核酸(DNA、RNA)、アデノシン3リン酸(ATP)、環状アデノシン1リン酸(cAMP)を構成する分子という形で細胞内に存在します。これらは細胞が活動するためのエネルギー源になる物質です。
それだけではなく、アデノシンそのものが細胞外で、情報伝達を行う働きがあることがわかってきています。
アデノシンによる細胞間情報伝達は、細胞表面にあるアデノシン受容体に、細胞外のアデノシンが結合することで行われます。アデノシン受容体はアデノシン以外とは結合しない特異性をもっていますが、構造がよく似たカフェインはこの受容体に結合することができます。
そうなると、他のアデノシンは結合でなくなり、本来伝達されるべきであった情報が伝達されなくなります。
アデノシン受容体は様々な細胞の表面に発現していますが、特に脳内ドーパミン作動性神経細胞にA2A受容体(アデノシン2A受容体)が多く発現しています。これは興奮や覚醒状態をつかさどる神経ですが、普段は興奮を抑えるためにアデノシンにより抑制されます。
しかし、カフェインがさらにアデノシンを抑制することによって「抑制の抑制」が起こってしまいます。
そして、カフェインは中枢神経系を興奮状態にさせてしまうのです。これは交感神経の緊張を意味していますので、血圧・心拍数の上昇や血糖値の上昇をも引き起こします。
このことは、血糖値の乱高下による自律神経の乱れも引き起こしてしまいます。
副腎疲労・低血糖症の原因の一つになります。
事実、低血糖症を患っている患者さんの多くが、日頃の生活の中でカフェインを多く摂取しています。
つまり、カフェインを習慣的に摂取していると精神症状を引き起こす可能性が高いということになります。
*カフェインは2004年まではドーピングに対する禁止薬物リストにも含まれていたような物質です!
カフェインはCYP1A2(チトクロームP1A2)およびモノアミン酸化酵素によって代謝されます。
よって、鉄欠乏性貧血が存在する方はチトクローム酵素の活性が低下している可能性があるため、カフェインが代謝されにくくカフェインによる症状も長引いてしまう可能性があるということです。睡眠障害のある女性は、鉄欠乏性貧血とカフェインの摂取をまず確認すべきです。
また、シメチジン(などのH2ブロッカー:消化性潰瘍の薬)やフルボキサミン(などの三環系抗うつ剤:SSRI)、オランザピン:ジプレキサ(などのベンゾジアゼピン系薬剤)を服用している方は、それら薬剤によってCYP1A2が阻害されるため、カフェインの代謝が阻害され、カフェインによる興奮作用が持続してしまいます。
MAOI(モノアミン酸化酵素阻害剤)を服用している方も同じく、カフェインによる作用は持続します。
つまり、精神薬や胃薬(H2ブロッカー)とカフェインを摂っている場合、興奮がおさまらなくなります。また、その作用が低下した時には、気持ちが激しく落ち込み非常につらい状態になります。副腎疲労・低血糖症も悪化の一途をたどることになってしまいます。
医師が精神疾患の診断に用いるDSM-Ⅳ-TR(精神疾患の分類と診断の手引き)にはカフェイン中毒(coffeine intoxication)として305.90に分類されています。
・・・にもかかわらず、精神科ではカフェインの摂取状況の確認や指導がなされていないのが現実です!これでは治るどころか薬との相乗効果で症状は悪化してしまいます!!
なぜ、患者さんに指導しない!?
・・・おそらく医師もカフェインを常習的に摂取しているからでしょう。
「自分が摂っていて精神症状が出ないんだから患者さんだけ出るわけない!」・・・などと思っているはずです。
そんなことはありません!
何度も言いますが、精神科や心療内科で処方されるお薬を飲み、カフェインを摂取していたら、興奮作用がおさまらなくなります。
また、血圧に関しても同じです。カフェインの常用により血圧が4~13mmHg上昇する可能性があるとも報告されているように、カフェインの交感神経亢進作用により血圧上昇が生じます。これを薬で下げようとはなんということでしょう!?
しかも、高齢者の多くが睡眠障害を患っていますが、この原因もカフェインによる可能性は高いです。そんな高齢者の方にベンゾジアゼピン系薬剤を服用させている医師も多いです。さきほど言ったようにベンゾジアゼピン系薬剤はカフェインの代謝を阻害します。
つまり、交感神経が高ぶった状態が維持されるわけですので眠れなくて当然です!
カフェインはその作用機序から、動悸や不整脈の原因になります。
事実、当クリニックを受診された患者さんには、心臓専門のクリニックにて動悸や不整脈の治療(薬物療法や外科手術)を行っていたが治らないという患者さんが多く来院します。
こういう方々に共通の症状は「歯ぎしり・くいしばり」による歯の痛みです。
一般的な歯科医院では「原因がわからないです・・・気持ちの問題かもしれないから精神科に行ってごらん」などと指導され精神科を紹介されるケースもあとを絶ちません。歯ぎしりは、血糖値の乱高下が生じる際の低血糖時に交感神経の緊張作用によって生じると考えられます。当然、食事指導を行い、カフェインを断っていただけると歯の痛みは消えます。同じように動悸がおさまります。
精神薬を服用しはじめたら、余計悪くなるでしょう!
このケースでも同じです。医師はカフェインが動悸・不整脈を起こすと思っていないのです!(もしくはカフェインの作用機序がわかっていないのか!?)
そして、歯科医師もカフェインの作用によって、歯をくいしばる・夜間低血糖を招き歯ぎしりをするということを理解していないのでしょう!
カフェインはまたエストロゲン(女性ホルモンの総称)の分泌を亢進させる働きがありますので、乳腺症や乳癌などエストロゲン過剰による症状がある場合にはカフェインを控えることで改善するケースもあるそうです。
*エストロゲン過剰には腸内環境も関係します。
カフェインは生体内で代謝されると、主に尿酸となって尿中排泄されます。
仕事などによる過労があり、高尿酸血症(尿酸値が高い)で悩んでいる方は、カフェインをやめましょう!
過労により体内の乳酸濃度が上昇します。乳酸はいわゆる「疲労物質」です。もし乳酸が増加している方がビタミンB3欠乏・亜鉛欠乏をきたしている場合、LDH(乳酸脱水素酵素)の活性が低下しているはずです。つまり乳酸を分解することができにくいため、乳酸を尿中排泄するしかなくなるということが生じます。乳酸と尿酸は腎尿細管での排泄の際、互いに拮抗します。そして優先的に乳酸が排泄されるのです。そして尿酸は再吸収されますので、体内の尿酸濃度は高くなります。
疲れを紛らわせる、眠気をとるために飲んでいたコーヒーが、実は尿酸値を高める原因でもあるのです。
尿酸値が高いと医師に指摘さている方!
カフェインや酸化ストレスに対する指導は受けているでしょうか?
ただでさえ、このように尿酸値が上昇しているのに、代謝されたら尿酸になる物質(カフェイン)をせっせと補給しているのだから、下がるわけがないです。
尿酸は核酸(プリン化合物)の代謝過程における最終代謝産物です。キサンチンからXOD(キサンチンオキシダーゼ)によって尿酸ができます。このXODの活性阻害を起こす薬が高尿酸血漿の薬(アロプリノールなどの尿酸阻害剤)です。
尿酸はラクタム形・ラクチム形が存在し、酸化還元反応を繰り返しています。生体内における大切な抗酸化剤が尿酸です。
酸化ストレス亢進状態も尿酸値が上昇する原因の一つです。
ということは、尿酸値が高い人はまずは以下のことを実践してみましょう。
・酸化ストレスの根源を断つ(タバコ、アルコール、激しい運動、過労、過剰な糖質など)
・ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化剤を補給する
・ビタミンB3(ナイアシン)、亜鉛を補給する
・カフェインを断つ
尿酸は抗酸化物質であり、ビタミンCを合成できなくなってしまった「ヒト」にとってはなくてはならない物質です。
尿酸値が低いということも問題があります。
低い場合はXODの活性低下が考えられます。この酵素の活性を起こすのに必要な分子はビタミンB2、鉄、モリブデンです。
CBS+などのSNP(一塩基変異多型)の影響でその下流のSUOXに負担を欠けている場合、モリブデンを余計に消費するためXODの活性は低下します。この場合、アンモニアや亜硫酸塩過剰の問題が助長されるばかりか、尿酸値も低下する可能性があります。尿酸の低下は生体内抗酸化能力の低下と関連します。
毛髪ミネラル分析においてモリブデンが低い方、血液検査にて鉄欠乏が確認できる方は尿酸値が低いことが関連するかもしれません。
また、尿酸阻害剤はもちろんのこと、大豆や玄米に多いフィチン酸(IP6:イノシトール6リン酸)も尿酸阻害があります。
無理なダイエットを頑張っている貧血女性や玄米菜食主義の方などは、低尿酸血症
である可能性があります。
酸化ストレスの亢進は発癌の原因にもなりますので、尿酸値が低いということは、癌も生じやすい体でもある可能性が高いということになります。
カフェイン(キサンチン誘導体)は日常的に手軽に手に入る物質です。現在では様々な症状の原因物質になっていることを医師や歯科医師は理解しなくてはなりません。
医師や歯科医師はカフェインについて全くと言っていいほど指導がなされていません!
精神症状は強くなるし、血圧や尿酸値は上がります。
歯ぎしりも生じ、せっかくきれいに補綴した歯も台無しになります。歯槽骨も吸収してきます(骨が下がる)。それを歯周病だと勘違いされるケースも多いのが現状です。
低血糖症・副腎疲労は悪化し、つらい症状が繰り返し出現します。
いくら高濃度で栄養を補給していても、改善が見込めない方!
カフェイン(キサンチン誘導体)の摂取状況を見直してください!
断ってみればわかります!
どれだけ強力な作用を起こしていたのか・・・ということが・・・